『達人プログラマー』の共著者として有名なAndy Huntによる『リファクタリング・ウェットウェア』を読みました。認知科学、神経科学、学習・行動理論に基づいた、学習や思考スキルに関する本です。
なお、この本を読み始めたのは達人プログラマーの20年ぶりの改訂版がベータとして発売されたタイミングで、そちらはベータが取れるのを待ち、こちらをまずは読んでみようと思ったことがきっかけです。
また、Courseraの『Learning How to Learn』、『エンジニアの知的生産術』などもそうですが、こういったメタスキルに関するものは、流れが速いIT業界の中で、早く身につけておくことで、流行りに惑わされない不変の力をつけておくことができるとも考えました。
内容
読者としてプログラマーを想定して書かれている部分が多く、多くの場所でコンピューターと脳の比較の話がでてきます。この2つは類似する点も多いものの、相違する点も多く、どうやったらフルに活かすことができるかといったことが本を通して書かれています。
右脳、右脳と単純に分けられがちな、脳の異なるモードについて本書ではL(inear)-modeとR(ich)-modeと区別し、直感を提供するR-modeの重要さを説いており、どう意識すればL-modeに抑えられがちなR-modeを協調させて活用できるかについて特に分量を割いて書かれています。
学んだことの実践のために、各区切りに「Next Actions」として、学んだトピックについて実際に行動するチェックリストがついており、今までの習慣から抜け出してリファクターされた考え方を実践する手助けをしてくれます。
また、付箋にして壁に貼っておきたいような言葉がTipsとして48つにまとめられており、あとからも参照しやすいようになっています。
良いなと思った点として、プログラマー向けに書かれた本ではあるものの、紙とペンを常に持ち歩いたり、本書で勧めているマインドマップもアプリではなく手で描くことを勧めています。プログラマーとしては全てデジタルで管理したくなりがちですが、アナログの良さも活用していきたいと思いました。
有名な、スキルの習熟度を5段階に分けるドレイファスモデル、目標設定のフレームワークであるSMARTといったものも目安として参考になりました。
感想
最後まで読んで、脳というものについて、自分の体の一部でありながら、いかに働きを理解していないか、認知バイアスがかかってしまっているかを思い知らされました。
この本が出版されたのは2008年であり、発展が目まぐるしい科学の中で、今では通用しないこともあるかもしれませんが、なるべく固定観念に囚われず、常に子供のようなまっさらな気持ちで何事にも取り組んでいきたいと思いました。まずは前から気になっていたマインドマップを実践してみようと思います。
最後にこの本の中で特に刺さったマルセル・プルーストの言葉を引用します。
The real voyage of discovery consists not in seeking new landscapes, but in having new eyes.
真の発見の旅は、新しい景色を探すことではなく、新しい目を持つことにある。