ラップトップを手に闘った悲劇の革命家アーロン・スワーツ

久々に心動かされる映像作品をNetflixで観ました。
2013年に自殺という形で26年の短い生涯を終えたプログラマー、活動家であるアーロン・スワーツのドキュメンタリー『インターネットの申し子: 天才アーロン・シュウォルツの軌跡』です。
観ようと思ったきっかけはうめのんさんのブログの『IT業界の住人が好みそうなドキュメンタリーがNetflixにある |』という記事です。せっかくの連休なのに天気が悪く暇だったので観たのですが、もっと早く観ておきたかったと思える作品でした。

アーロン・スワーツについて

米国においてはオンライン海賊行為防止法案(SOPA)騒動の時などにITの専門家としてテレビにも出演していたほどの有名人であるアーロン・スワーツですが、日本ではあまり馴染みがないかもしれないので簡単に紹介しておきます。

1986年にイリノイ州ハイランドパークに3兄弟の長男として生まれ育った彼は、RSSの構想に関わり、スタンフォード大学を1年で退学したあとY Combinatorに採用され、そこでredditの共同経営者となります。また、Python界隈ではweb.pyというウェブアプリケーションフレームワークの開発者としても有名なようです。その後、連邦裁判所の訴訟情報公開システムPACERや、論文などをネットで配布する電子図書館JSTORを相手に不正を正そうとプログラミングを武器に闘い、晩年はSOPAに反対する運動を展開します。そんな中、FBIや検察、MITに目をつけられ執拗に捜査され、それに耐えきれなくなってしまったためか最後は自殺してその生涯を終えます。

神童時代

そのアーロンですが、作品の中で神童っぷりが語られています。

3兄弟とも好奇心の多い子どもだったようですが、その中でもアーロンは抜きん出て天才ぶりを発揮していました。
例えば3歳の時、父親に「無料の家族向けの娯楽って?」と聞くので何かと思ったら、冷蔵庫に貼ってあるポスターに書かれていることを読んでいたというのです。
また、同じく3歳の頃からコンピューターに熱中し、12歳の時には誰でも編集可能な情報提供サイトを作り上げます。それなんてWikipedia?と思ってしまいますが、アーロンはWikipediaが世に出る5年も前に12歳という年齢で同じアイデアを形にしていたのです。
そして、RSSの構想に関わり始めたのも若干13歳でした。

これらのエピソードを聞いて、本当の天才というのは存在するんだなと思わされました。

印象的だったのは、自殺から時が経っていないにも関わらず、彼の幼少期を語る時、両親や兄弟の目からは優しさが溢れていることです。短い生涯ですが、周りの人に対して強烈な閃光を残していったのだと思います。

枠に収まりきらなかった学生時代

そんな彼ですが、高校時代は押さえつける学校の教育に馴染めず、前述の通りスタンフォード大学も1年で退学してしまいます。常に物事を疑問の目で見て常識を疑っていた彼には、学校という枠は狭すぎたのでしょう。

活動家時代

redditの共同経営を経たのち、法外な値段を要求するうえ検索性も全く無い、連邦裁判所の訴訟情報公開システムPACERや、こちらも高額なライセンスを支払わないと論文などを閲覧できない電子図書館JSTORを相手に、プログラミングの技術を駆使して、それらの所有物を無償公開してしまおうという闘いを挑みます。このあたりの手段の是非などは作品をご覧になって皆さん自身で判断していただきたいですが、その行動の根底には「一部の人にだけ知識が渡る世の中を正しくするんだ」という強い正義感があったのだと思います。

その意味でアーロンは真の革命家だったのかもしれません。それも武器ではなくラップトップを手にとった現代の革命家です。

その最後

活動をするうえで、PACERの件ではFBI、JSTORの件では検察とMIT、SOPAの件では国家に目をつけられ捜査を受ける彼ですが、その強烈な正義感とは裏腹に、非常に繊細な人という印象を受けました。
例えば最初の職場では満足いく環境で働けずトイレに篭って泣き続けたり、FBIに捜査を受けていた際はずっと震えていたと明かしています。彼の弁護士もemotionally vulnerable(感情的に脆弱)と分析して気をつける必要があると検察に提出したそうです。
彼の正義が、巨大な組織を相手に精神的に耐えられず、結果的に自殺という形で屈することとなり、見ているだけで非常に悔しい思いを抱きました。

彼の残していったもの

僕はredditのヘビーユーザーです。多少の問題があるとはいえ、健全でユーモアにあふれた議論が成り立つredditという場所が大好きで、それを残してくれた功績だけで彼には感謝しきれないです。

これからも彼が残してくれたものを通して、僕はインターネットの世界に生きていこうと思います。この素晴らしくも腐った世界に残された最後の砦で、時代が彼に追いつくことを願いながら。

Rebuildに受けた影響のリスト

たまにはゆるい記事を。

Tatsuhiko Miyagawaさんがホストのテクノロジー系ポッドキャストRebuildの熱心なリスナーである僕がRebuildから受けた影響をネタ混じりにずらっとリストにしてみました。ちなみに嘘が3つ混じっています(笑)。

改めて僕にとってLife-changing podcastだなぁと。そして、こうして見るとhakさんネタが多い(笑)。

働きながら勉強している開発者としてRui UeyamaさんがゲストのRebuild 153が刺さりまくった

Tatsuhiko MiyagawaさんがホストをされているポッドキャストRebuildに、Rui Ueyamaさんがゲストとして初登場された、2016/08/09配信のRebuild: 153: Connecting The Dots (rui314)が非常に刺激的で、「働きながら勉強している全ての開発者に聴いて欲しい」と思うほど感銘を受けたので紹介します。

Rui Ueyamaさんについて

ゲストのRui Ueyamaさんについては、最近書かれた記事がよくホットエントリーになっていたこともあり、お名前は聞いたことがあったのですが、どんなお仕事をされているかなど詳しいことは知りませんでした。

今回のRebuildの紹介によると、Googleに所属しながらLLVMのリンカーであるlldにオーナーとしてフルタイムで貢献する仕事をされているとのこと。それだけでも低レイヤー扱っててなんか凄そうと思ったのですが、話が進んでいくと、「ある日思い立って」趣味でCコンパイラーを書いたという話や、本屋での立ち読みで独学していた話など、聞けば聞くほどなにやら凄まじい方だと思いました。

働きながらスタンフォード大学

前半のお仕事についての話ももちろん興味深く聞いたのですが、何より刺激を受けたのが働きながらスタンフォード大学を履修したという後半の話です。

スタンフォード大学は全ての講義を録画しており、それらをネットで観ることができるので、ほとんどオンラインのみで履修が可能なのだそうです。これについてはnoteにRui Ueyamaさんが書かれた以下の記事に詳しいです。

ただ簡単に履修できるかというと、そこはトップ大学で、予習復習や課題に時間がかかり、多い時は週40時間もかけていたそうです。深夜遅くまで課題を解いていたこともあったとか。いやぁ凄まじい…。

そういった姿勢に、働きつつ勉強している開発者の端くれとして、自分も頑張らねばと奮い立たされました。 ただ、苦しみながら勉強されていたのではなく、楽しみながら勉強されていたのではないかと想像します。僕はそうなのですが、社会人になってからやる勉強って楽しいんですよね。

スタンフォード大学の講義は無料で受講可能

ちなみにRui Ueyamaさんも受講したIntroduction to Compilers (CS143)などの講義はLagunitaというスタンフォード大学が提供するプラットフォームで無料で受講可能です(Compilersはこのページ)。このCompilersの講義は評判がよくてよく名前を聞いているので、僕もいつか受講してみたいと思っています。

あとCourseraUdacityなどのMOOCsでトップ大学の講義を受けてみて思うのが、トップ大学だからといって超難解な講義になっているかというとそういうわけではなく、むしろ解りやすかったりすることです。もちろん機械学習やらアルゴリズムなどの講義になると高度な数学的知識が必要だったりはしますが。

社会人になってから大学に入ることについて

日本では一度社会人になってから大学に入ることは一般的ではないですが、redditなどを見ていると30代、40代になってからコンピューターサイエンスの学位を取るため大学に入るという人も少なくないようです。日本でもそれが普通のことになればいいなと思います。

ここからは妄想なのですが、人工知能などの発達によりもっと機械化が進み人間のする仕事が減って、1週間のうち3日は働いて2日は学生をやるとか、3年働いて2年学校に通うサイクルを繰り返すとか、そういう余裕がある社会になってくれないかなぁなどと思ったりしてます。

夢はでっかく…

それにしてもRebuildというポッドキャストが存在してくれていてよかったです。確実に自分の人生に影響を与えています。今こうやって高校数学の勉強をしているのはMiyagawaさんのインタビューの影響が大きいですし、最前線で働いている方の話を通してテクノロジー業界の広い世界を見せてくれることで、自分の置いている世界に希望を持たせてくれます。面白いアニメ、ゲーム、小説、映画、ドラマの話題にも事欠かないですし*1

しかし今回のエピソードには刺激を受けました。こうなったら、夢はでっかく「スタンフォード大学で学位を修得すること」としてみようと思います。

日本の大学にすら入ったことのない僕ですが、その分、大学への憧憬の念が人一倍強ったりします。今の段階では、ほとんど無謀で、あくまで夢であって目標ではないですが、まずは小さな山から始めて、いつか登ってやるという気概でいようと思います。全くの不可能ではないと信じて…。

*1:今は勉強に時間をかける時だと思って、興味あるものがあっても遊んだり見るのをグッと我慢してますが。あー、Overwatch遊びたい!

全ての学ぶ人へ―学び方を学ぶ講義『Learning How to Learn』

Courseraで、カリフォルニア大学サンディエゴ校のDr. Barbara OakleyとDr. Terrance Sejnowskiによる『Learning How to Learn』という、「学び方を学ぶ」コースを受講し、昨日無事修了することができました。

Courseraの中でも特に人気の高いコースらしいのですが、もっと早く受けていればよかったと思えるほどの、理論的かつ実践的で素晴らしいコースでした。その中から内容について一部を紹介します。

FocusedとDiffuseという2つのモード

物事を考る時には、既知の領域にあたる時に細かく物事を分解しステップバイステップで考えるFocused(集中)モードと、未知の領域にあたる時にもっと広く物事を考えるDiffuse(拡散)モードという、2つのモードがあるそうです。懐中電灯で例えるなら光を絞った時がFocused、光を開いた時がDiffuseモードにあたります。これらのモードは同時に入ることはできないため、対象や場面によって使い分けをすることが重要になります。

このモードの使い分けを実践していた偉人のエピソードとして、サルバドール・ダリの話があります。ダリは構想の際、椅子に座り、手には鍵を持ってうとうととしながらDiffuseモードで考えを巡らせました。やがて眠りに落ちると鍵が落とされ大きな音が鳴り響きます。それを機に一気にFocusedモードに入り、それまで巡らせていた案を練り上げていたそうです。同様のことをトーマス・エジソンも、鍵ではなくボールベアリングを用いてやっていたそうです。

メモリー(記憶)

ワーキングメモリーは同時に4つほどの情報しか格納できないことが分かっているそうです。そのため上手くワーキングメモリーと長期メモリーを使い分けることが大切になります。ワーキングメモリーから長期記憶に情報を移すためには練習と繰り返しが必要で、だんだん間隔を開けて練習する間隔反復という手法が有効とのことです。また、1日に詰め込むより何日かに分けて覚えたほうが長期記憶に残りやすいそうです。

脳は視覚や空間を記憶することにおいて能力を発揮するそうです。そのため、例えばf=maという式を覚える際、fがflying、mがmuleとして飛んでいるラバを想像すると覚えやすいそうです。この時、匂いや音まで想像するとさらに効果的だそうです。また、記憶力チャンピオンなども使う、「記憶の宮殿」というテクニックも有効です。これらのテクニックを使うことで、記憶に残りやすくなるだけでなく、創造力も鍛えることができるとのことです。

その他にも、思い出したりミニテストをすることで効果的に記憶に定着させることができるそうです。

チャンク

チャンクとはある物事に関連するひとつのまとまりです。ギターで歌を覚えるという例でいうと、1節1節をチャンクとして覚え、それらを繋げて曲全体を覚えるというイメージです。1つ1つのチャンクを作らなければ、全体像を描くことはできません。これらのチャンクを構築するには、集中した注力、理解、練習が必要となります。チャンクを構築することで、例えば脳にタコが住んでいるとすると、そのタコが触手を伸ばして関連する情報を集めることができるようになります。また、チャンクは、物理のチャンクがビジネスのチャンクに結びついたりというように、一見関係ないような他のチャンクと結びつくことができます。

実は効果的でない勉強法

実は効果的でない勉強法として以下があるそうです:

  • 再読→間隔を開けて読まなければ効果はあまりないそうです。
  • 答えを見る→本当は身についていないのに理解したつもりになりがちです。
  • 線を引く→1段落に1つほどに抑えるようにした方がいいそうです。
  • 概念地図→関連が頭の中で固められていない段階で描いても効果が少ないそうです。

引き伸ばし

学習の際の障害として、やるべきことをあとに回してしまう「引き伸ばし」があります。意志の力でどうにかしてしまおうとしてしまいがちですが、意志力は引き寄せるのが難しいため、絶対に必要な場合以外、引き伸ばしを避けるために使うべきではないとのことです。そこで大事になってくるのが習慣です。

習慣は以下の4つの要素で成り立っています:

  1. Cue(きっかけ)
  2. Routine(決まりごと)
  3. Reward(報酬)
  4. Belief(確信)

このうち習慣を変えるためにはCueに対する反応を変えることが最も大事です。そこに対してだけ意志力を使います。あとはRoutineを変えるため携帯電話の通知をオフにしたり、Rewardを用意し、Beliefを変えるためにいい習慣を持つコミュニティに参加したりするといいとのことです。

そして、勉強を始める際のコツとして、成果(product)ではなく過程(process)に目を向けるといいそうです。例えば「宿題を終わらせる」ではなく「25分勉強する」といった具合です。ここで25分の作業と5分の休憩を繰り返す、ポモドーロ・テクニックという手法が有効となります。

また、タスクを作ることも引き伸ばしに対して効果的だそうです。具体的なやり方としては、まず1週間ごとに鍵となるタスクのリストを作ります。そして寝る前に次の日に達成できそうなTo Doリストを作ります。寝る前に作ることで取りかかりやすくなります。この時、終了時間を決めることが作業時間を決めることぐらい重要だそうです。終了時間を決めなければダラダラやってしまいがちになるからです。また、"Eat your frogs first in the morning."という言葉があるそうですが、最も重要で嫌なタスクから取りかかることがよいそうです。

勉強以外で効果的なこと

まず睡眠が重要だそうです。実は起きているだけで脳は毒性物質を作り出しており、眠ることでこれらの物質を排出できるからです。また、覚えたいことを夢に見たいと思うことで夢でそのことを見る可能性が上がり、記憶の形成に役立てることができるそうです。

次に運動です。神経の生存を助けてくれる他、運動している間にDiffuseモードに入ることができます。Dr. Terrance Sejnowskiはジョギングの際、思いついたことを忘れないようメモを持ち歩くそうです。

テスト対策

簡単なものから解いていく人が多いですが、まず全体に目を通して、難問から解き始めることを勧めています。そうすることで難問で詰まってしまった場合に簡単な問題に移ることで難問に対してDiffuseモードに入ることができるからだそうです。練習が必要なので、まずは宿題で試してみることを推奨しています。

テストに怖気づいてしまった時は、テストによって「恐くなってしまった」と思うより「わくわくした」と思ったほうがパフォーマンスがよくなるそうです。また、腹式呼吸の深呼吸をすることで落ち着きを取り戻すこともできるとのことです。

その他

他にも電気の流れを水の流れとして考えるといった、例えやメタファーの重要性に言及されており、実際にコース自体もゾンビやヴァンパイア、ピンボール、レンガ壁といったイラストによる例えが出てきて、記憶に残りやすいということを実際に証明してくれています。

まだまだここで紹介しきれていないTips満載のコースですので、興味が出た方は是非ご自分で受けてみることをお勧めします。

MOOC入門としてお勧め

このコース、MOOCに興味はあるけど何から受けようか迷っているというような方にとてもいいんじゃないかと思いました。

理由としては以下の通りです。

  • 各週が1時間ぐらいで終えられるぐらい短くまとまっている
  • 期間も4週間と短い
  • 全ての課題の締め切りがコースの終わりまでとなっており自分のペースで学べる
  • 無料での受講でもクイズを受けることができる*1
  • 可愛いイラストが豊富で堅苦しさがない
  • これからの学びのための土台となってくれる
  • 前提知識が一切必要ない

実践してみようと思ったこと

このコースを受けてみて、楽に覚えようとしちゃだめなんだなということを思い知らされました。特に実際には理解できていないのに解ったつもりになる、ということの危険性を意識しなければと思いました。

思い出すことの実践として、勉強の区切りごとにページを閉じて思い出す作業を入れるようにしてみようと思います。

ポモドーロ・テクニックも導入してみたいですが、例えば動画の教材の場合に25分で区切った時にすごくキリの悪いところだった時はどうするべきかなんかを知りたいなと思いました。

最後に

最後に、学んでいる人へ送る言葉として、Dr. Terrance Sejnowskiの言葉を引用したいと思います。

... success isn't necessarily come by being smart. I know a lot of smart people who are not successful. But I know a lot of people, who are very, very passionate. And persistent.
成功は賢さから来るものとは限らない。私は賢いけれども成功していない多くの人々を知っている。その代わり、非常に情熱的で継続的な多くの人々を知っている。
A lot of success in life is that passion and persistence, of really staying the course, staying working on it, and, not letting go. Not giving up. That's really, I think the most important, quality that I see in students, that I work with, who are successful.
人生における成功とは、道から外れることなく努力し続け手放さないという情熱と継続にある。諦めないこと。それが私と共に働いていて成功している学生に見ることのできる最も重要な特徴であると思う。

*1:Courseraのコースにはお金を払わないとクイズを受けられないものも多いそうです

Courseraの一部のコースが消されてしまうのでダウンロードしておきましょう

Courseraが現地時間2016/06/30をもって一部のコースを消去してしまうようです。プラットフォームの改修による影響とのことです。

その中には非常に評判のいいコースも含まれています。 代表的なものでいうと、

などがあります。

2016/06/30以降、これらのコースにオンラインでアクセスすることができなくなってしまいますが、それ以降もコースを受講できるよう、コースをまるごとローカルに合法的にダウンロードする方法があります。

どうやってダウンロードするかについてはredditの"Calling out all seeders. I've been uploading a few Coursera courses for the past 10 days on kat.cr and more are coming. Contribute by either seeding or downloading the other courses from Coursera."というポストにまとまっています(はてなブログからredditにリンクが貼れないため、このタイトルで検索をお願いします)。また、無くなってしまうコースの一覧がこちらのGoogle Sheetsにダウンロードリンクも含めて(torrentあり)載っています。

MOOCsの頭文字のうちOpenの部分が損なわれるこのようなことが起こってしまうのは残念ですが、まだ提供するプラットフォーム側も試行錯誤の途中といった感じなのでしょうね。

『SOFT SKILLS』の10ステップ勉強術がよさそう

最近、本を読む本 (講談社学術文庫)を読んだり、CourseraのLearning How to Learnというコースを受講してみたり、何を学ぶかということから一歩引いて、どうすれば効果的に学ぶことができるかということを学んでいます。

読了した『SOFT SKILLS』というソフトウェア開発者向けに書かれた本の中でも、勉強法について書かれている章があって参考になったので紹介したいと思います。

本全体の僕のレビューは別記事に書いてあるので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

10ステップで学ぶ

著者は学習のステップを10段階に分けて実行するように勧めています。ステップ1〜6は1度限り実行し、7〜10は繰り返し実行します。

以下、デジタル写真の撮り方を学ぶことを例に取りながら、1ステップずつ見ていきます。

1度限りのステップ

ステップ1:全体像をつかむ

デジタル写真でいえばブログポストや記事を流し読みする段階です。

学びたいテーマについての基本的な調査を行います。時間をかけすぎないことが重要です。

ステップ2:スコープを決める

ポートレート写真の撮り方を知りたいというようにスコープを決めます。

前のステップで得た情報を使い、小さい分野に焦点を絞り込んでいきます。

ステップ3:成功の基準を決める

すべての機能の使い方を身に付け、それらを説明でき、どのような理由でそれぞれを使うべきか理解できるようにします。

曖昧でなく、具体的な成果にまとめていきます。

ステップ4:参考資料を見つける

マニュアルだけで止まらないようにします。

クオリティは考えず、ブレインストーミングのようにできる限り多く集め、あとでフィルターにかけます。

ステップ5:学習プランを作る

ここまでで何を学ぶべきか、どのような順序で学んでいくべきかのアイデアが浮かぶはずです。

参考資料候補の本の目次を見て道筋の参考にします。

ステップ6:リソースをフィルターにかける

資料から選抜チームを作ります。

このステップ6までが1度限り実行するステップです。

繰り返すステップ

ステップ7:使い始められるようにする方法を学ぶ

様々な光源とその効果を自分で試せるところまで、光のモジュールについて学びます。

マニュアルを読んで少し遊び、マニュアルに戻ってきてしっかり読みます。

ステップ8:遊び回る

外でカメラの露出などを調節したり、条件の異なる場所で撮影したりします。

遊びながら疑問を生み出し、参考資料によりそれらを解決します。

ステップ9:役に立つことができるところまで学ぶ

光に関しての疑問に対して参考資料から答えを探します。

成功基準に向かって前進するモジュールでなければなりません。

ステップ10:教える

異なる光源とそれが写真に与える影響の具体例を示す簡単なYouTube動画を作ります。

ほかの何をしてもこのステップを省略してはなりません。

感想

厳密にこの10ステップに従う必要は無いと著者は書いています。やはり最後に大事になるのは自分に一番合った方法を自分で見つけるということなんだと思います。

僕は本を読む時に最初から最後まで隈なく読み通してしまうタイプなので(そして内容の6割以上を忘れてしまう)、目的から逆算してスコープを絞るこのやり方をこれから参考にしてみようと思いました。

また、教えるということを絶対に省略してはならないということも印象的でした。僕がこのブログ記事を書いているのは、学習方法について短くまとめるて紹介することで、自分の中に定着させるということの実践でもあります。

『SOFT SKILLS』、おすすめです

他にも様々なアドバイスが満載の『SOFT SKILLS』、おすすめです(Kindle版もあります)。繰り返しになりますが、僕が書いた紹介記事も参考にどうぞ。

SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル

SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル

『SOFT SKILLS』をソフトウェア開発者1年目の今読めてよかった

higeponさんがブログで絶賛されていたことで有名な『Soft Skills』の日本語版が2016/05/20に出版され、その後2016/06/01にKindle版がリリースされたのを機に早速購入して読みました。章ごとの長さが短くまとまっているおかげで読みやすく、一気に読んでしまいました。

全体を通しての感想ですが、ソフトウェア開発者として1年目の世間知らずな今だからこそ読めてよかったと思いました。ソフトウェア開発者というのは、自分次第で道を切り開いていくことのできる、可能性に満ちた職業なんだということをこの本は教えてくれたからです。

本の構成

ソフトウェア開発者の人生マニュアルという副題がついているように、この本はソフトウェア開発者向けに書かれた、ソフトウェア開発以外の部分についての著者の体験に基づいたアドバイス集となっています。キャリア、マーケティング、学習、生産性、お金、健康、精神という7つの部から構成されています。

序文からしてひきつけられた

Clean Codeなどの著者として有名なアンクル・ボブが序文を書いているのですが、その寄稿依頼の際のエピソードからしてひきつけられました。

著者は最初、序文を書いてもらうため、数十個のWordファイルで本の原稿を送ったのですが、それでは面倒だし締切日に間に合わないと、多忙なアンクル・ボブはいったん断ります。しかし、著者はそこで諦めず、出版社に掛け合い締切日を伸ばしてもらい、全体をPDFとしてまとめて送りなおします。その熱意にうたれ、アンクル・ボブは序文を書くことを引き受けます。

著者の行動力の高さを裏付ける素晴らしいエピソードだと思います。このように、この本に書かれていることは、机上の空論ではなく、著者が実践してきたことだからこそ説得力を持って響いてきます。

特に響いたアドバイ

どの章も参考になるものが多かったですが、特に僕の中で響いたものをピックアップします。

第5章 面接をハッキングするコツ

面接を受ける前に、面接する会社の開発者ブログをすべてフォローし、コメントを残していくというハックが書かれていました。本番の前に外堀を埋めてしまうというやり方で、したたかではあるけれども非常に効果的だなと思いました。

第9章 出世階段の上り方

ほかに誰もやりたがらないものを引き受けることや、何をしたかのサマリーを「週報」として上司に送る、といったアドバイスが書かれています。後者は上司に存在をアピールできるだけでなく、人事考課でも役立つ資料となると書かれており、なるほどと思いました。

また、この章を読んでいて、ほぼ日での厚切りジェイソンの出世がしたかったという話を思い出しました。階段を駆け上っていくというゲームのプレイヤーになるかならないか、そこを選ぶのは個人の選択ですが、どうせ同じ年月を働くのであれば上を目指していきたいと思いました。

第29章 ステップ1~6:1度限りのステップ

ステップを10段階においた、著者が実践している学習方法が書かれてあります。この学習方法については、別のブログ記事で紹介していますので、興味があればご覧ください。

第32章 弟子をとる:ヨーダになる

他人に教えるためにはその人より1歩先まで進んでいればいいと書かれています。

人に教えるとなると、間違いがあってはならないと思い、尻込みしてしまいがちですが、教えることによって自分の学習にも役立つのだということが説かれています。

第38章 ポモドーロテクニック

ポモドーロテクニックは、集中のためのテクニックとして捉えがちですが、1ポモドーロ (25分) を単位とすることによって作業量の見積もりとトラッキングのためのツールとして真価を発揮するということが書かれています。

ポモドーロテクニックは、何度か試してみたことはあるものの効果を実感できなかったので、そういう考え方をするのかと眼から鱗でした。

最後に

解説でまつもとゆきひろさんが書かれているように、アメリカと日本でソフトウェア開発者の待遇の違いが大きくあることもあり、この本に書いてあることを全て鵜呑みにしてはならないことは事実です。著者が成功した不動産投資の話なんかも生存バイアスがけっこうかかってる感じがあります。ただ、この本に書かれていることが全く通用しないかというとそうではないと思います。

もし僕と同じようにまだ経験の浅いソフトウェア開発者たちがこの本に書かれていることを実践していけば、日本のソフトウェア業界も変わっていき、ソフトウェア開発者という職業がもっと羨望の目を持って見られるような明るい未来を作ることもあながち誇大妄想ではないのでは、などと思いました。

SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル

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